ついに新しいゲームを発明したセガ
「もうドリームキャストで作らなくていいんですかあ……?」
かつて、ゲーム機メーカーの一角だったセガ。初代プレステと争ったセガサターン。次世代機の頂点に座るべくリリースされて一大ムーブメントを巻き起こしたドリームキャストの迷惑さ。
ゲーム機戦争では必ず語られる“敗者セガ”のゲーム機たち。
歴史的敗戦から幾数年、自社機配給の呪縛から解き放たれしセガの一大攻勢期となった2000年代後半、
「アクティブ・シミュレーションRPG」が発明され、セガ復権の号砲が撃ち放たれた。
「戦場のヴァルキュリア」って何?
近世エムブレム。
いわゆる「コマ動かしのSRPG」な任天堂基幹タイトル「ファイアーエムブレム」のようなスタイルなんだけど、
戦ヴァルの舞台は「近世ヨーロッパ」における「熱機関火器戦争」なのである。
故にもしくは、
コール オブ デューティ・アニメ版。
なにかのシリーズ在りきの表現でよろしかったでしょうか。「そんなのしらないよーー」って言う方はもちろんググっていただいてコスト削減にご協力ください。
仮想通貨にキモチが持ってかれてんねんな
名作トピック
コテコテな古典戦記ドラマが良い
RPG業界としては目新しい舞台となる近世ヨーロッパファンタジーにしては、とくに新しみのないシナリオ展開となる本シリーズであります。でもまあメタルギアソリッド的な細菌兵器やバイオ兵器等による倫理観やらを問う大人シナリオよりも「親しみやすい」というスタイルなのである。水彩画をモデルにした優しいアニメ調子のグラフィックデザイン「CANVAS(キャンバス)」もミリタリー感の当たりを柔らかくしてくれているのだ。
戦場のロマンス戦劇こそヴァルキュリア
「コマ動かし」と「アクションシューティング」
独自のバトルシステム
「BLiTZ(ブリッツ)」
「ユニットをチェスのようにコマ動かしていくシミュレーション」ではなく、「銃を持って撃ちまくるだけのアクション」でもなく、
その両取り。
これによって「じっくり戦略する」楽しさと「瀬戸際のスリル」を楽しめるというわけなのだ。すなわち機甲軍団の父ハインツ・グーデリアンの電撃作戦。
あるいは機甲軍団の仔エルヴィン・ロンメルの電撃作戦
この基軸システムとジャパニーズ戦場ドラマのタッグによってか、2010年に「プレイステーション3史上最高のシミュレーションRPG」としてギネス記録に認定されたという。
どういう認定基準なのかはわかりません
虐げられしセガRPGの系譜を継ぐ
大正ロマンあふれるロボット恋愛RPG(?)「サクラ大戦」や、ドリームキャストと沈んだ名作冒険活劇RPG「エターナルアルカディア」などなど、セガ屈指のドラマティックゲームたちを手掛けた「オーバーワークス(あるいは旧スタッフ)」による開発という流れを持っているようだね。
売上
戦場のヴァルキュリア | 約15万本(?) | 08年/PS3 |
戦場のヴァルキュリア2 | 約15万本 | 10年/PSP |
戦場のヴァルキュリア3 | 約15万本 | 11年/PSP |
蒼き革命のヴァルキュリア | 約5,6万本(?)/合算 | 17年/PS4 |
戦場のヴァルキュリア4 | - | 18年/PS4-スイッチ |
参照「各シリーズ」Wikipedia/「ゲームデータ博物館」さま
2,3の流れは正直そんなにお金かかってないと思うんだけど(システム流用率高いから)、新規シナリオというだけで売上を落とさずしっかり儲けられるところに感服。「熱を冷まさず投入する」という商売人がいたようだけど。さすがセガ。
歴代タイトル
- 戦場のヴァルキュリアシリーズ
- セガの回天成った00年代後半期の名作SRPG。「もうドリームキャストで作らなくていいんですかあ……?」的な感動後のセガは大躍進を遂げ、エンタメ産業に於いて大ヒット作をリリースし続けた。「ムシキング」に「龍が如く」そして戦場のヴァルキュリア。
- 「戦場のヴァルキュリア」
- 「戦場のヴァルキュリア2」
- 「戦場のヴァルキュリア3」
- 「蒼き革命のヴァルキュリア」
- 「戦場のヴァルキュリア4」
ガソスタ店員たちの革命
戦場のヴァルキュリア
ゲーム情報
新しい戦場。
この「アニメ的な近世戦場感」は他のゲームではなかなかお目にかかれないロケーションではないでしょうか。RPGの主流といえば中世ヨーロッパファンタジーに対するかのような、
近世ヨーロッパ・ファンタジー。
うん。これで伝わるかな。重火器や戦車が登場するゲームとなると「バトルフィールド」やら「メタルオブオナー」やら「コールオブデューティー」やらといったゴリゴリの「リアル戦場ハードプレイシューティング(FPS)」が鉄板ですけれども、
この戦ヴァルは
「動体視力が高くなくとも近世ヨーロッパロケーションを楽しめるJRPG調な名作」
なのである。
“アニメタッチの鉄火時代”それすなわち戦場のヴァルキュリアである。
ここまで言えば何かはヒットすると見たなにせ新しいジャンルなんで
ウェーイな戦場
戦場のヴァルキュリア2 ガリア王立士官学校
ゲーム情報
2からやると勘違いする。
こちら続編のガリア王立士官学校編。前作から2年後を舞台に「ガリア内戦を戦った学徒兵たち」を描く学園ジュブナイル・ウォーズ。
ポップすぎるこの戦場。
まさにウェーイ系によった青春パワーに染められるガリア内戦の実態。「帝国のガソスタ化をなんとか阻止したガリアであったが、人種を巡る内紛によって泥沼化する世界大戦中、ウェーイな戦場がそこには在った」という戦ヴァル2をやると、
「だいぶカジュアルな戦争なんやなあ」
というイメージが付いてしまうのでご用心。
1はドラマティック。2はウェーイ。
腐ったみかんたちの逆撃
戦場のヴァルキュリア3
ゲーム情報
イベントの多いガリア公国。
小国ガリアというイメージがあるにしては「反乱(革命)軍」だの「懲罰部隊いじめ」だのと多彩なシチュエーションが展開される戦ヴァルシリーズ。
というかガリアでしかやっとらん。
他を見渡せばエディンバラ連合王国やら東ヨーロッパ連合などを舞台にすることもできるだろうにとにかくガリアでのみ事件が勃発するコナンくん状態にあるガリア公国。
1で守ったガリアもここまでくると「一度滅んだほうがええんちゃうかな」思うてまうな。
健気な小国感ゼロですもん
戦場のヴァルキュリア DUEL
やっぱり出ていたスマホカードゲーム。
そんでやっぱりサービス終了
急にどうした。
蒼き革命のヴァルキュリア
ゲーム情報
急にどうした(2回)
そんな「F5(華の5人組)」みたいな格好して。
花より男子的な格好して。前作より大分大きな間隔が空いた2017年初句にリリースされたシリーズの異端児・蒼ヴァル。
「華のフランス革命期」や「産業革命後のロンドン」辺りがイメージか。
今回はそんなエレガンス(?)な近世ヨーロッパのロケーションやファッションを打ち出していこうとした作品なのでありましょうか。
テーマも「復讐」ということで、
戦争が舞台になっているにしては幾らか暖かいロマンスドラマ調であった今までの戦ヴァルシリーズに比して「ダークファンタジー調」な仕上がりをみせておりますね。
バトルもゴリゴリにアクションしとるし。
咒術やらあるし
そして、
とうとうこの時がやってきました。
戦ヴァルファン、
待望。
東部戦線開幕
戦場のヴァルキュリア4
ゲーム情報
「極寒の地での戦いは、
熱い友情の物語だった。」
これはたしかに戦ヴァルですね。
このくさい感じのキャッチコピーは完全に戦ヴァル感。
「近世ヨーロッパの戦場に少年ジャンプ的な王道ロマンスドラマ」
は完全に戦ヴァル感。ファン待望の正統作「戦場のヴァルキュリア4」がついにリリース。
しかしまだ征暦1935年の呪縛。
シンプルに「続編とは言い難い同時代設定」でもって結局は第7小隊にスポットを当てたいのかどんだけ第2次ヨーロッパ大戦やるやねん。どうあっても第2次ヨーロッパ大戦やるやねん。
灼熱の北アフリカ戦線まではやるっ
どうやらモチーフは東部戦線のバルバロッサ作戦辺りと推察されます。
ナチスドイツとソ連の泥仕合
名キャラ列伝
“魔術師”ウェルキン・ギュンター
いわゆる軍事的天才。
「一つの民族の1000年の歴史上に1人出れば良いほう by司馬遼太郎」といわれる才能がガリア公国に出現したのは幸福なことであったか。鉄火器熱機関動力が渦巻く近世の戦場にあって、自然の地形や風土を駆使した奇策戦略戦術をとりまわしての大活躍。生物社会学を専攻する22歳の大学生こそがガリアの命運を変えたのであった。
正直、ヤン・ウェンリー的モデルだと思う。
※銀河英雄伝説…大河SF戦記ノベルの大傑作として今なお読み継がれる。「完璧な天才」VS「不世出の名将」の銀河を股にかけたドラマが最大のテーマになる。最近(2016~2018~)ではJCの封神演義の藤崎竜によってヤングジャンプで漫画が連載中
自由惑星同盟、やる気ゼロの英雄ヤン・ウェンリー的な昼行灯キャラですよねこれは。あるいは中華史にみられるような「わかりやすい策戦」でもって戦局を打開していく様は非常に大衆エンタメ的で、ゴリゴリになりやすい近代戦闘に親しみを与えているのが彼の戦い方なのだ。
そして名前がガリアの伝説的英雄ウェルキンゲトリクス由来。
※ウェルキンゲトリクス…古代ローマ時代、ユリウス・カエサルによるガリア制圧に真っ向から対抗した民族的英雄。アレシアの戦いで敗れて敗死した。カエサル自身による「ガリア戦記」に詳しい。
我が中世ブラック物語の担任である佐藤健一による「カエサルを撃て」や漫画「アグリッパ」でも登場するガリアの英雄ウェルキンゲトリクス。
ローマ時代のガリアというのは現フランスに相当する地域。
大陸ヨーロッパの盟主であった軍事大国フランスが、密かに秘める民族的英雄像として第2次世界大戦中の降伏時などに盛んに取り扱われた。
こういうの好きなの
“ロージー” ブリジット・シュターク
27歳のロージー。
ガリア義勇軍第7小隊の「切込み隊長」を担う伍長。本業はシンガーであり酒場から酒場へ渡ってはソングスを披露していた歌姫でもある。戦後は各地でスターになったというだいぶ渋いファッションセンスの持ち主である。
義勇軍に参加する有象無象さがいいよね
“突撃娘” イーディ・ネルソン
敵に囲まれるとパニックになる突撃兵。
そんなポンコツなら後方支援兵でもやればよいのに生来の剛毅さから切り込み隊長を買って出る勇士イーディそのひとである。英国の海神ホレイショ・ネルソン提督の名を持つとは思えないポンコツぶりである。
第7小隊の広報宣伝紙「陣中日誌」の看板娘として、
支離滅裂な日々の記録を記していい気になっておられるご様子に全国の購読者たちは虜になったとかどうとか。
やあ…こんにちは。
ぼくは陣中日誌の担当を命じられた、ホーマー・ピエローニ…。みんな、よろしく頼むよ…。
イーディ:
おほほほほ!同じく担当になりました、第7小隊のアイドル!イーディ・ネルソンですわ!よろしくしてあげてもよくってよ!
ホーマー:
………イーディさん…。お客さん達に対して、そんな横柄な…。
イーディ:
そんなこと構いませんわ!わたくしを誰だとお思いですの!というか、わたくしたち日誌を書いているはずですのに、誰に対して自己紹介してるんですの?「お客さん達」?誰もいないじゃないですの!
ホーマー:
ふふ…そうかい…?ぼくは感じるよ…。ぼくたちを奇異の目で取り囲む、観衆達の視線を…。
イーディ:
気持ち悪いこと言わないで下さいまし!大体「日誌」なんて言っておきながら、どうせ毎日書いたりなんかしないんでしょう!全てお見通しですわよ!
『今日から日誌を書きます』December 21, 2007 17:00 記録者:ホーマー・ピエローニ / イーディ・ネルソン
古き良きネット文化の名残ですな
“無いデレ嬢” イムカ
「無い。話すことは無い。お前に興味は無い。」
もうこの頃になるとツンデレ市場も飽和してきているので「もう喋らせない」というツンの局地に至った「無いデレちゃん」イムカ。
しっかし当然のごとくにそこまで振ったあとのデレ反動たるや凄まじい破壊力を有しているのでありがとうござります。
野生の犬がなつく感じの方
“伝説のヴァルキュリア” セルベリア・ブレス
さっすがタイトルにもなるヴァルキュリアのバディ。
これは完全にわかっておりますよねいたずらに肌を露出するよりもラインに這わせる形でもってデザインされた衣装バディの艶めかしさたるや空前絶後の女王様感。
ヴァルキュリアとは月のウサギさんでもモデルにしているのでありましょうかそうでないとしても今後の基本デザインとして取り入れる必要がありそうなものですけれどいかがでありましょうか現場からは以上です。
読まなくていいやつ
ヴァルキュリアってなんですか?
いま「戦ヴァル」を楽しむならおすすめはどれから?
戦場のヴァルキュリア リマスター
1に始まり1に終わる初代戦ヴァルがキホン。
というかこのシリーズは基本的に「ガリア第7小隊の物語」になってる感があり、2にも3にも必ず登場するのが第7小隊。砂漠の狐エルヴィン・ロンメルの第7機甲師団やアメリカの第7太平洋艦隊などなど歴史上高名な部隊はセブンフラッグというそういう感じのところも突いて来ているのかどうなのか。
1が気に入れば2や3もやることになるだろう。第7小隊の話が見たいから。
そうしているうちにランシール士官学校やネームレスたちのドラマにも親しんでいく。そしてダメ押しの4にてエディンバラ連合王国E小隊にもスポットが当たる。
これが戦ヴァルの大河的楽しみ方。
どうや!普通のことを言うとるんやで!
まとめ
リアルな文化を背景にすること
このロシア軍ぽさ。
いいよねこのデザイン。寒いからね。
寒いなら当然に保温性と防風性と汗による熱気を通す透湿性が必要になる。
だから服飾デザインというものは、そんな実際の要求に答える形で生み出されるわけだ。あとはその土地々々の産出物などでも用いられる素材が違ったりする。暑ければ麻が使われて寒ければ毛皮が使われたりもする。
それが人々の文化背景として、
その人が身にまとう服になる。
それが文化。文化なのである。嗚呼、文化なのである。子供の頃はそんな文化がどうとか伝統がどうとか全然気にならないアホなことあるけど、
やっぱりどこか重力や文化感を無視したデザインは飽きてくる様になった。
1面しか無いからだ。それは。つまりハリボテ。
右があれば左があり、表があれば裏があり、上があれば下があり、光があれば影が生まれる。つまり色々見渡せて味が出てくるわけでさ。
人が1人そこに立っていれば、何億年の歴史を着ているはずなんだよまったく。
「リアリティ」だとかで表されることだけど、たしかにリアリティがなければその世界や人に入り込むことができない。
「本物っぽい」とか「真に迫る」ものがあるからこそ「それを信じることができる」というわけなのかね。
嘘だとわかってる話を真剣に聞く者はいまい。
演技が上手ければそれでも引き込まれる。
それがフィクションシナリオの楽しみかたか。
そしてそうでなければ「子供のままごとに付き合ってやっているときのような」キモチにしかなれないのだ。
信じているその子供にとってはままごとではなくて「本当」なんだろうし、
だからあんなに面白いんだろうし。
そしてそんなリアリティがあればこそファンタジックにも価値が生まれて活きてくるようになるという2元論。
なんでもバランス
「反抗の象徴」と「セガRPGチーム」
「もうドリームキャストで作らなくていいんですかあ……?」
ハード機戦争後のセガはまさにこんな感じだったみたいだよね龍が如くをみる限り。まあ、とにもかくにもこうして終わった以上は、
「ドリキャスより万倍も売れた(諸説あり)プレステでゲームが作れるということがクリエイターの意欲を上げた」
とかどうとかということにしておきたいこのブログ史観。そんななか生まれた新機軸RPG「戦場のヴァルキュリア」の最新作主人公の名は、
クロード・ウォレス。
おそらくウィリアム・ウォレスがモデルや。
スコットランドの民族的英雄として名高い。イングランドの歴史上でも武名の誉れ高き英王「エドワード1世(長脛王)」に公然と対抗し、「スターリング・ブリッジの戦い」を勝利に導いたウィリアム・ウォレス。
古代ガリアのウェルキンゲトリクスを由来に持つ戦ヴァル1の主人公ウェルキン・ギュンターを踏襲しすぎた主人公やで。
3から時間が経ってようやく出てきたシリーズが「なんか変なのだった」もんだから「これはいけないということで原点回帰」というのは幻想水滸伝5にもみられる現象でありますけれど。
ウェルキンゲトリクスもウォレスも史実では敗けて死ぬ。
この手の救国物語で最優秀女優賞であるジャンヌ・ダルクも敗けて死ぬ。
まあ政治的に。
※自分には敗けていません
敗けなきゃ美談にならないし。ゲームでは勝つけどね。ゲームだし。
セガも敗けた。セガサタもドリキャスも敗けた。
そりゃ負けに敗けた。
そりゃみごとな敗けっぷりだった。
ドリキャスほど有名な敗けハードもないんじゃないのかってくらいの盛大なる敗けっぷりたるや筆舌に尽くしがたい厳かなる大負けだったんだ。
いいかとにかくセガは敗けたんだぞ。
覚えておくように若き世代よ。
いいこと言う気ゼロ